弁護士法人前波法律事務所(まえばほうりつじむしょ)

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弁護士は、事件処理等において、とても個性の影響する仕事です。
必ずしも、法的な話をするものではありませんが、人となりを少しでも理解していただければ幸いです。

処分について

 さる令和5年7月21日、当職に対し、戒告の処分が下されました。しかし、その内容は到底承服できるものでないばかりか、その要旨の書き方についても相当に問題があるものと考えております。結果、公表された要旨の内容が、著しく悪質性を強調された書きぶりとなっており、事実とかけ離れた印象を与えるものとなっているため、ここに自己の名誉を守るために弁明を行いたいと思います。

 なお、本件は、現在、日本弁護士連合会に対し、処分の取り消しを求めて審査請求を行っております。戒告処分の最も端的な問題点は、懲戒議決書とそれに対する審査請求理由書に示されておりますので、以下、概要を示した上で、詳細については、それらの内容を添付いたしますので、ご参照いただければより内容についてご理解いただけるものと考えております。懲戒議決書、審査請求理由書は匿名化しており、それらの全ての内容は、福井地裁令和5年(ワ)第110号預り金返還請求事件の訴訟資料に示されており、閲覧可能な状況になっていることを申し添えます。

審査請求理由書 HP用(PDF)
懲戒議決書匿名版(PDF)

 要旨の記載を見ると、当職が何の説明もなく、100万円単位で一方的に報酬請求を釣り上げ、あげく一方的に預かり金から報酬を領収したかのような書き方になっておりますが、内容もニュアンスも異なります。

 まず、「適切な説明を行わなかった」とありますが、行っておりました。依頼者には資金がなく、当職は弁護士報酬を取らずに仕事を続け、当職の預り金すら運転資金に回さざるを得ない状況であったため、破産になるか清算が可能となるか不確かな状況の中、支払不可能な報酬説明を行うことができず、概要説明にとどまらざるを得なかったという面はあります。その状況に応じた説明は行っておりました。

 「第1次715万円余り、第2次877万円余り、第3次991万円余り」と「内訳を変更、金額も増額した」とありますが、まず、その報酬の基礎となる業務は、テナントの負担が付着して直ちには更地化できない不動産を約2億で売却し、破産が危惧される中において清算直前の状態まで資産や負債を整理したというものであり、1年以上の間、訴訟2件、調停2件、その他不動産交渉や組合の管理などを行っていたというものです。結果として、優に1億円以上の資産を組合に残しております。決して高額な報酬ではありません。内訳変更、増額というのも、解任後の交渉期間中に、相手方の支払態度の変化、当職が行っていた調停の妥決、さらには、紛議調停での主張提出の要請、などの事情の変化が介在しております。決して一方的なものではありません。

 「弁護士報酬を請求」とありますが、「請求」という言葉は一度も使っておらず、請求は一切しておりません。契約書の作成ができなかった事案として、報酬交渉のための提示を行ったにすぎません。もちろん、預かり金での相殺や領収など、可能ではありましたが、一切行っておりません。訴訟で和解するまで、何らの領収はしておりません。

 「預り金について・・・一方的に差し引いて返却した。」とありますが、懲戒請求者は清算段階に入っており、1000万円近い未収金がある中で預り金を返却すると、直ちに清算により懲戒請求者は解散し、未収金の回収は完全に不可能になります。報酬の確定のために預かり金として留保していたものですが、それに対する非難は、実質的に報酬を放棄せよという結論を含むものであり、到底受け入れられる内容ではありません。

 以上のように、要旨の記載全てにおいて、重要な部分を看過し、一方的に当職が悪質であるかのように記載されておりますが、そのような事実はありません。特に、金額は不適切でないと認定しながら、ことさらに金額を要旨に記載しており、悪質性をことさらに強調しようとする悪意がうかがわれます。何よりも言いたいのは、本件において、当職の業務には全く結果に影響するような問題がないばかりか、懲戒請求者の利益は考えうる限り最大化されており、懲戒請求者には利益こそあれ損害は全くありません(報酬額についても、相当な範囲であると懲戒議決書では述べられております。)。むしろ、懲戒請求者の利益を第一に考え業務を行っていたということについては、十分に断言できますし、業務遂行状況からも肯定しうると思います。

 もちろん、本件において、事後的に、より適切な行動は観念することができます。反省点がないというものではありません。今後は、本件での教訓を生かしつつ、依頼者のためにある自分の業務をより推し進めていきたいと思います。

 この文章を参照していただいた方には、上記についてご理解いただくとともに、今後ともご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします。

以上

P.S.

上記文章は、福井弁護士会において公告された要旨に従って作成したものです。

「自由と正義」(令和5年11月号)に掲載された要旨は、福井弁護士会の要旨とは、著しく異なります。よって、自由と正義しか見ておられない方にとっては意味不明に感じられると思います。

 ただ、それらの差異は、本件が、要旨の抽出においても著しい差が出るほどの案件であり、戒告判断に至っている福井弁護士会の判断の危うさを示すものといえます。さらに、日弁連も要旨の作成に苦慮したのではないかと思われることから、上記文章はそのままにしたうえで、必要に応じて議決書を参照いただくことといたしました。

 なお、自由と正義においては、2019年11月6日において、支払も適切な説明も可能かのような書き方がされておりますが、その日は、解除条件等が付された売買契約が締結された日に過ぎず、売買代金の受領や登記移転はなされていないため、報酬の支払は不可能であるばかりか(代金の受領は12月23日)、全体の清算業務としての残余財産も未知数であり、報酬の細かな説明等はおよそ不可能な段階であると考えております。

さらには、報酬の上限を説明していたとしても、「その内訳及び算定方法の説明」を「書面、メールなどの文字情報で」行われなければならない、というような規範が示されておりますが、契約ができないことを前提にしてそのような説明を求める内容であり、正直、理解しがたいものとなっております。日弁連での要旨の作成の苦慮が感じられるところです。ただ、依頼者に何らの実害がない中、説明不足だけで戒告を受けると捉えられるような内容は、全国の弁護士に大きく影響するのではないかと思います。

今後、この件に関してのコメントについては、お約束できるものではありませんが、何らかのご参考になれば幸いです。

以上

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